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硬膜外ブロック療法について

Q1.硬膜外ブロックとはどのような治療法ですか?

脳から背骨の中を縦につながって通っている神経の束を脊髄(せきずい)といい、この脊髄を包んでいる膜を硬膜(こうまく)といいます。硬膜の外側の空間は硬膜外腔(こうまくがいくう)と呼ばれ、ここには脊髄から枝分かれして、手足へと向かう馬尾(ばび)や神経根(しんけいこん)などの神経の枝(脊髄神経せきずいしんけい)が存在しています。
硬膜外腔に注射によって神経を麻酔する薬(局所麻酔薬)を注入すると、脊髄神経に麻酔がかかり、痛みの感覚を脳に伝達する神経の動きが遮断されます(この神経の働きを遮断する治療のことをブロックといいます)。

Q2.単なる痛み止めの注射で、一時的な効果しかないのでしょうか?

いいえ、違います。硬膜外腔に注入された局所麻酔薬は、痛みの間隔を脳に伝える感覚神経に生じた異常な興奮状態を沈め、一時的に痛みの間隔を緩和させるだけではありません。血管の太さを細く変化させる自律神経(じりつしんけい)も局所麻酔薬によって麻酔されるため、血管が太く拡張するようになり、血液の勿れが良くなります。血液の流れが良くなると痛みの刺激を生じる物質(発痛物質はっつうぶっしつ)が洗い流されますので、持続していた痛みの緩和が期待できます。また、運動神経に生じた異常な興奮状態も鎮まり、筋肉の緊張が和らぐため、筋肉由来の痛みを緩和させる効果もあります。

Q3.どのような病気に対して行われるのでしょうか?

以下のような背骨に由来する痛みに対して行われます。
1.くびの骨(頚椎けいつい)の中を通っている脊髄神経由来の痛み
(首の付け根や肩~腕~手の痛みを生じる頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症など)
2.こしの骨(腰椎ようつい)の中を通っている脊髄神経由来の痛み
〔腰の痛みを生じる急性腰痛症(いわゆる「ぎっくり腰」)〕
(おしり~ふともも~すね~足の痛みを生じる腰椎椎間板ヘルニア、腰椎症性神経根症、腰椎すべり症など)

Q4.どこから注射の針を刺すのですか?

肩~腕~手に向かう脊髄神経は、頚椎の中で枝分かれしていますので、これらの部分の痛みに対しては、頚椎の脊髄神経に麻酔をかけるために、首の付け根の後側から針を刺します〔警部(けいぶ)硬膜外ブロック〕。
腰やおしり~ふともも~すね~足に向かい脊髄神経は、腰椎の中で枝訳れしていますので、これらの部分の痛みに対しては、腰椎の脊髄神経に麻酔をかけるために、お尻の割れ目の少し上にある骨(仙骨せんこつ)の下端(仙骨裂孔せんこつれっこう)から針を刺します〔仙骨部(せんこつぶ)硬膜外ブロック〕。

Q5.どのような薬を使うのですか?

硬膜外ブロックでは神経に由来する痛みをとるために、神経に麻酔をかける局所麻酔薬であるリドカインという液体の薬を使います。
局所麻酔薬に対するアレルギー反応として、発疹、むくみ、息切れ、血圧低下、動悸などを稀に生じることがあります。これまでに、局所麻酔薬を使った後(例えば歯科での抜歯のときなど)に気分不快や発疹、その他アレルギー反応を起こしたことがある方や薬物アレルギーのある方は、事前に担当医に知らせて下さるようお願いいたします。
また、強い痛みが急に生じている場合には、神経に強い炎症が急に起こっていると予測され、この炎症を鎮静化させる目的でデキサメタゾンというステロイドホルモン薬を局所麻酔といっしょに使うこともあります。

Q6.どのような手順で行われるのですか?

まず、ブロックの前に血圧を測定します。
次に、硬膜外ブロックを行うための特別な姿勢になってもらいます。硬膜外腔に注射をするためには、患者さんの姿勢が非常に重要で、患者さんの協力が必要不可欠です。ご協力をお願いいたします。
頚部硬膜外ブロックでは、イスに腰掛けた状態で、深くお辞儀して、あごを胸につけるように首を前に曲げていただきます。
仙骨部硬膜外ブロックでは、ベッドの上でうつ伏せになった状態で、お尻を上に突き出すような格好になるために、おなかの下に大きめの枕を入れます(痛みが強くてうつ伏せになれないときはベッドの上で横になって、腰を丸めた状態で行います)。
姿勢がとれましたら、最初に針を刺す部分を消毒液でよく消毒します。その後、針を刺す痛みを感じにくくするために局所麻酔薬を皮膚に注射します。
次に、麻酔がかかった皮膚から硬膜外腔に向かって太い針を刺します。その後、硬膜外腔に刺した針を通じて局所麻酔薬を硬膜外腔に注射します。
硬膜外腔に針を刺している最中や局所麻酔薬を注入する際に、多少痛みが出ることもあります。しかし、もし痛みを感じても、できるだけ体は動かさずに、口でおっしゃって下さい。
局所麻酔薬の注入が終われば、針を抜いて、針を刺した場所を消毒液で消毒し、絆創膏を貼って終わりです。

Q7.どれくらいの時間がかかるのですか?

硬膜外ブロックそのものは、数分で済みます。しかし、後で述べる血圧低下や手足の脱力などの合併症が出ないかどうかを観察するため、硬膜外ブロック後、30分から1時間はベッドの上で横になって休んでいてもらいます。

Q8.硬膜外ブロック後に気を付けることはありますか?

硬膜外ブロック後、数分から10分ほど経つと手足が暖かく感じるようになってきますが、これは局所麻酔薬によって血圧を保つ自律神経に麻酔がかかり、血管が拡がって、血液の流れが良くなったためですので、心配ありません。
注射後、数分ごとに血圧を測ります。もし、異常を感じたらその場ですぐ看護師に伝えて下さい。
30分から1時間横になって休んだ後、起き上がったときに、ふらつきや手足の脱力などが出ることがあります。無理に起き上がらずに、すぐ近くにいる医師や看護師にお知らせ下さい。
硬膜外ブロックでは、太い針を刺していますので、その穴から細菌が侵入し、化膿する恐れがあります。このため、硬膜外ブロックを受けた当日は入浴しないで下さい。翌日からはかまいません。
翌日以降、硬膜外ブロックの針を刺したところがひどく傷む場合や、背中や腰に強い痛みが出た場合、或いは熱が出たりした場合には、当院まで至急連絡していただくか、受診して下さるようお願いいたします。
なお、硬膜外ブロックを行った結果、硬膜外ブロック前にあった症状がどれくらい良くなったか、何日くらい効いていたかをよく覚えておいていただき、次回受診時に担当医にお知らせ下さい。

Q9.硬膜外ブロックの合併症にはどのようなものがありますか?

硬膜外ブロックの合併症として次のようなことが起こることがあります。

1.一時的な低血圧:血圧を保つ自律神経にも麻酔がかかるので、血管が拡がる結果、血圧が下がることがあります。このため、硬膜外ブロックの前後に血圧を測定します。血圧が下がった場合には、自然に回復するまで1~2時間横になって休んでいてもらいます。血圧の低下が大きな場合には、血圧を上げる薬(昇圧薬)を使って治療します。低血圧は一時的なもので、時間が経てば必ず元に戻ります。

2.一時的な手足の脱力:硬膜外ブロックによって運動神経に麻酔がかかると、手足に力が入りにくくなることがあります。手足の脱力が生じた場合には、自然に回復するまで1時間くらい横になって休んでいてもらいます。手足の脱力は一時的なもので、時間が経てば必ず元に戻ります。

3.局所麻酔薬による中毒:硬膜外ブロックのために局所麻酔薬を使った後、急に次のような症状を起こすことがあります。

1)口の周りや舌のしびれ感
2)めまい、頭がくらくらする
3)耳鳴り
4)目がくらむ、かすんで見える
5)手足の筋肉がピクピクけいれんする
6)気を失う

このような症状が出た場合には、酸素を吸ってもらい、さらに点滴を打って、局所麻酔薬が体内で分解されて、排泄されるまでの間、経過を観察します。局所麻酔薬が体から抜ければ自然に回復します。
4.細菌感染:稀(発生頻度0.06~0.4%)に、針を刺した部分から細菌が入り、化膿することがあります。背中が急に痛くなり、高熱が出て、さらに手足がしびれてきて、思うように動かせなくなる麻痺が出現します。硬膜外ブロック後に背中が急に痛くなったり、発熱した場合には、当院まで至急連絡していただくか、受診して下さるようお願いいたします。

5.硬膜外出血:稀(発生頻度0.01~0.05%)に、針を刺した後に硬膜外腔にある血管から出血することがあります。この場合、背中が急に痛くなり、手足がしびれてきて、思うように動かせなくなる麻痺が出現します。硬膜外ブロック後に背中が急に痛くなったり、手足にしびれを感じるようになった場合には、当院まで至急連絡していただくか、受診して下さるようお願いいたします。

福島県立医大
整形外科監修